村社の想い出(夏)

先日、久々に生まれ故郷に行ってみた。故郷を離れて半世紀、光陰矢のごとし、月日が経つのは早いものだ。年に数回は、親類のお宅へお邪魔してしているが、現在の故郷の様子などを聞くのが楽しみである。 今回は、集落の西外れの山に鎮座…

どんぐり山(春)

田んぼの中に「どんぐり山」と私たちが呼んでいた山がある。山と云うよりは周囲50m位の、高さ10m位の丘であった。 ちょうど、どんぐりの実の帽子を取ってそれをかぶせたような形である。山には「しの竹」が密生していて、杉の木と…

遠い夏の日の想い出(2)(夏)

久しぶりの青空!庭の片隅の木陰に椅子を持ち出し、冷たいビ-ルを飲む。久しぶりの暑さと疲れから酔いが回る。 麦わら帽子を顔に掛け、すこし微睡む。蝉の忙しげな鳴き音が微睡みの中で、三十数年前のお寺の裏山で鳴く蝉と 交錯し、あ…

竹の子(春)

昭和30年頃」、ちょうど、「となりのトトロ」の舞台となった年代である。いつもみるたびに、私の脳裏に焼き付いている風景が小間切れフイルム のように甦ってくる。 少し大きめのよれよれのランニングシャツ、だぶだぶの半ズボン、お…

山歩き(春)

3月のはじめ、私のお気に入りの山に入った。「おにぎり」二つと、熱いお茶の入った「サーモス」、そして少しばかりの「酒」をデイパックに突っ込む。山といっても高い丘のような所で、全体が雑木で覆われている。 私は、簡単な足拵えを…

老木の春(八重桜の想い出)(春)

「あの八重桜、どうしたかなぁ~。」「丁度今頃、咲き始めるんだよなぁ~。」そんなことを呟き、五月の風を受けながら車を走らせる。 周りの山々は淡い緑と言うよりも白に近い芽吹き色に輝き、斑に見える黒木山と眩しいくらいのコントラ…

早春(春)

自分の殻に「じぃ-っ」と閉じこもり長かった「冬」からの脱皮。なにもかもが歓喜にあふれ、躍動の季節の訪れである。「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 私の心は、早春の岸辺の枯れ葦の中にいる。「そぉ-っ」と竿を出す。…

床屋(夏)

暑っ~い。連日、35度を越すような猛暑。午前中に用事を済ませ、昼飯を食べ終えると窓を全開にした部屋でゴロリと横になる。籐の枕を置き、窓側に置いた扇風機を60分にセットする。暑い中でも心地好い風が眠気を誘う。 「おとうさん…

つららの想い出(冬)

(私が少年時代過ごした想い出深い我が家) 昔撮った写真のネガケースを整理していたら懐かしいネガが出てきた。ネガケースには昭和47年2月とある。 多分、一眼レフカメラアサヒペンタックスSPを買った翌年に自宅を撮った写真だと…

現像てんまつ記 その二(秋)

遠い地平線が消えて深々とした夜の闇に心休めるとき遥か雲海の上を音もなく流れ去る気流は弛みない宇宙の営みを続けています。満天の星を戴く果てしない光の海を豊かに流れ行く風に心を開けば・・・・・・・ 「ミスターロンリィー」この…