渓釣り(秋)

午前4時。夜明けまで1時間。外は真っ暗、雨もぱらついている。車の中で仮眠をとろうとしても眠れない。今日は今年最後、納竿前の釣行である。何故か興奮して眠れそうもない。霧雨に濡れるフロントガラスをうつろに見つめながら「今日は…

小さい秋(秋)

厳しかった暑さも峠を越え、澄みきった空には秋を告げるイワシ雲が広がる。真っ白な花を付けた蕎麦畑には、赤トンボが舞い始めている。そして、朝夕は秋の気配。先日、ラジオを聴いているとあのメロディーが流れてきた。サトウハチローが…

ひまわり(夏)

野原一面を黄色く染めるヒマワリ。夏の強い日差しを浴び、鮮やかな黄色い輪郭が浮かび上がっている。どれもがギラギラと照りつける夏の太陽に顔を向けている。丁度、熱弁を揮って語りかけている指導者に耳を傾ける群衆のようだ。 二十歳…

雫(しずく) (夏)

今日は、今までの厳しい暑さが嘘のような天気。朝から重い雲が垂れ込め、今にも雨が降りそう。以前、スマフォに保存しておいたお気に入りの音楽を聴いてみる。Bluetooth対応のイヤホーンからは、私の好きなショパンの雨だれが流…

麦わら帽子(夏)

何時もの、散歩コースにあるマロニエ並木にあるベンチ。 ハンケチで額の汗をぬぐいながら、ちょっと微睡(まどろむ)。 何故か、懐かしい想い出が脳裏をかすめる。 七月の風 夏の強い日差しを遮るように、マロニエの大きな葉がベンチ…

八月の風(夏)

ぎらぎらと照りつける真夏の太陽が、乾ききった白い砂利道に私の黒い影を映しだしている。土埃をもうもうとあげながらその砂利道を一台の車が通り過ぎて行く。私は咄嗟に脇の雑木林に入った。 一瞬、暗闇の中に入ったように目の前が真っ…

ベンチ(夏)

百日紅の真っ赤な色彩から甘い魅惑的な馨しさに誘われて、蜜蜂が羽音を発しながら花に纏わりついている。 その甘い香りに誘われて、私も百日紅の花に顔を近づけてみた。甘い香りは真夏のギラギラした日差しの暑さを一瞬忘れさせてくれる…

村社の想い出(夏)

先日、久々に生まれ故郷に行ってみた。故郷を離れて半世紀、光陰矢のごとし、月日が経つのは早いものだ。年に数回は、親類のお宅へお邪魔してしているが、現在の故郷の様子などを聞くのが楽しみである。 今回は、集落の西外れの山に鎮座…

どんぐり山(春)

田んぼの中に「どんぐり山」と私たちが呼んでいた山がある。山と云うよりは周囲50m位の、高さ10m位の丘であった。 ちょうど、どんぐりの実の帽子を取ってそれをかぶせたような形である。山には「しの竹」が密生していて、杉の木と…

遠い夏の日の想い出(2)(夏)

久しぶりの青空!庭の片隅の木陰に椅子を持ち出し、冷たいビ-ルを飲む。久しぶりの暑さと疲れから酔いが回る。 麦わら帽子を顔に掛け、すこし微睡む。蝉の忙しげな鳴き音が微睡みの中で、三十数年前のお寺の裏山で鳴く蝉と 交錯し、あ…