
先日、久々に生まれ故郷に行ってみた。
故郷を離れて半世紀、光陰矢のごとし、月日が経つのは早いものだ。
年に数回は、親類のお宅へお邪魔してしているが、現在の故郷の様子などを聞くのが楽しみである。
今回は、集落の西外れの山に鎮座している村社に行ってみた。
村社に行くには、集落を西に抜けて行く。
道沿いに川が流れているが、両側に建つ家々は近代的な住宅に建て替えられ、昔の面影はほとんど無くなってしまった。
ただ、集落を流れる川だけが昔の面影を感じさせてくれている。
しかし、川面に立ってみると水量も少なく、何故か川が小さく見える。
小学生の頃、夏になるとこの川で水浴びをしたものだ。
我が家から500メートル上流にある造り酒屋の水車から、浮き輪に乗って川下りを楽しんだものである。
今でも覚えているが、その浮き輪というものは下駄屋で持っており、昔の戦闘機の車輪のチューブであったらしい。
子供ならその浮き輪の中にすっぽりと入り、それは快適なものだった。
そんな川なのだがやけに小さく細く見える。
大人の目線と子供の目線の違いなのだろうか。

村社に通ずる農道は田んぼの中にあり、雑草の中に二本の轍となって鳥居まで続いていた。
入り口は大きな銀杏木が鬱蒼と茂って光を遮り、闇の中に鳥居と石段が山の上へと続いている。
この村社では、毎年春祭りがあり、子供のころはこの鳥居の前に数件の出店が建ち、ブッカキ飴やセルロイドのお面などが並んでいた。
じっと見ていると、後から後から子供の頃の想い出が浮かび出てくる。