
私が南摩ダムに通い始めたころ、ダム建設を題材にした小説に出会いました。
写真は、上南摩地区で撮影した墓地。
先日、石川達三の小説「日陰の村」(昭和12年新潮へ発表)を読んだ。
石川達三は、ブラジル移民問題を題材にした「蒼氓」で第一回芥川賞を受賞した小説家である。
「日陰の村」は官の一方的な発想によってダム建設が計画され、廃村へと追い込まれた住民無視の社会的問題を題材とした作品である。
舞台は多摩川上流に位置する東京府小河内村。
昭和5年に東京水道局より立案され、東京府の水がめとして多摩川を堰き止め大貯水池を造り、小河内村を沈めてしまおうと言うものである。(現在の奥多摩湖)
山間の静かな村に突如として湧き起こったダムの建設計画。それによって大きく揺れ動いた小河内村民の不安と苦悩、そして官と民の狭間に立ち、我を忘れて村民の為にわが身を捧げ尽くした村長の苦悩の日々を描いた感動の作品です。
私はこの作品を読みながら、今撮り続けている上南摩の地を当時の小河内村にダブらせていたのかもしれない。
遠い祖先から受け継いてきた大切な土地を手放さなければならない人達の計り知れない辛さ悲しさは今も昔も変わらないのではないだろうか。
(風のつぶやき!より抜粋)